星空保護区®について
星空保護区認定に向けた美星町の取組
美星町が認定を受けた「コミュニティ部門」(ダークスカイ・コミュニティ (International Dark Sky Community))は、町や市といった単位が認定対象で、質の良い屋外照明の使用に関する条例が施行されており、光害についての活発な教育啓発活動、地域住民の夜空保護への支援など、優れた取組が実践され、周辺地域への模範となる地域とされています。
認定を目指す上での最重要ポイントは、屋外照明が「上方光束ゼロ、色温度3000K以下」の照明器具であることです。上方光束とは、照明器具から直接水平より上方に発する光であり、ゼロにするためには適切な形状の器具を使用し、適切な角度で設置することが必要です。色温度3000K以下とは電球色のような優しい光色であり、白色LEDは不可です。この屋外照明の改善が認定を目指すにあたり最もハードルが高い条件です。
【取組の主な経緯】
2016(平成28)年春
美星天文台長が「沖縄県の西表石垣国立公園が国際ダークスカイ協会の「星空保護区®」の認定を目指している」との情報を得る。
2016(平成28)年9月
井原市地域創生課(当時)職員がIDA東京支部代表で東洋大学准教授の越智信彰氏のもとを訪れ、「星空保護区認定制度」について意見交換
2017(平成29)年8月
美星町でIDA東京支部 越智代表が講演:テーマ「光害から自然との共生を考えよう」
IDA東京支部 越智代表講演
2018(平成30)年3月
美星町観光協会が中心となり「STAR VIEWER PROJECT(現:びせい星守プロジェクト)」の活動が始まる。
・町内の自動販売機や電飾看板の22時以降の消灯推奨
・町内街灯を環境に優しい色への変更推進
2018(平成30)年12月
美星町でIDA東京支部の研究会が開催される(専門家による発表など)。
IDA東京支部 研究会
2019(平成31)年3月
井原市と美星町観光協会が協議し、「星空保護区®」のコミュニティ部門の認定を正式に目指すことを確認
2019(平成31)年3月
井原市職員がパナソニック㈱岡山電材営業所を訪問し、美星町の取組について相談。同社はその考えに賛同、協力体制の構築。
2019(令和元)年7月
パナソニック㈱から防犯灯のモデル照明が提供され、美星町内に設置してテストを実施
→ IDA東京支部 越智代表が現地確認。わずかだが上方向への光漏れがあるとの指摘
2019(令和元)年7月
美星町民向け光害対策セミナー開催(講師:IDA東京支部 越智代表)
光害対策セミナー
2019(令和元)年8月
光害防止条例制定30周年を踏まえ、美星町観光協会が美星町民向けに特集記事を掲載した広報誌を発行
2019(令和元)年9月
井原市長と美星町観光協会役員がパナソニック㈱本社を訪問。IDAの基準に適合する照明器具の開発を要請
→ 同社は環境に配慮した考え方に賛同し、すぐに開発に着手
2019(令和元)年11月
美星町民向けに「光害と星空に関するアンケート」を実施(協力:IDA東京支部 越智代表)
2019(令和元)年11月
国内初の光害防止条例制定から30周年。井原市がシティプロモーション事業の一環として、星空保護区認定に向けたPR動画を2本リリース
2020(令和2)年1月
パナソニック㈱が開発した屋外照明(防犯灯、道路灯)がIDAから国内初認証を受ける。
IDA認証照明器具(防犯灯) 提供 パナソニック株式会社
2020(令和2)年1月
地域の意識の高揚を図るため、美星町観光協会が啓発用のぼりやノベルティを作成し、啓発活動を展開
びせい星守プロジェクトロゴマーク
2020(令和2)年1月~2月
照明器具交換及び啓発活動に係る自主財源確保に向け、美星町観光協会がクラウドファンディングを実施
→ 目標金額2,000千円に対し、5,922千円(296.1%)で達成
美星町観光協会によるクラウドファンディング
22020(令和2)年7月
パナソニック㈱と井原市が共同でプレス発表。モデル地区(八日市地区)で認証器具の見学会を実施し、各メディアで大きく取り上げられる。
パナソニック株式会社と井原市との共同記者会見
2020(令和2)年10月~12月
美星町内の防犯灯の交換作業を実施
→ 交換数量 389台
照明交換作業
2020(令和2)年10月~12月
パナソニック㈱と美星町の連携によるSDGsの取組を、同社がテレビCM(30秒)として制作し、全国放映
2020(令和2)年12月
美星町観光協会が美星町民向けに、認定に向けた特集記事を掲載した広報誌を発行
2020(令和2)年12月
光害防止条例の一部改正案可決
2021(令和3)年2月~3月
井原市において、美星町内の公共施設の屋外照明で基準を満たさないものについて交換作業を実施
→ 施工施設 67施設、交換数量 344台
また、岡山県にも協力を仰ぎ、国道・県道沿いの道路照明で基準を満たさないものについて交換作業が実施される。
→ 交換数量 7台
2021(令和3)年4月
申請書の作成等すべての準備が整い、IDA本部への認定申請が完了(4/28付)
IDA本部での審査
2021(令和3)年3月
IDA東京支部 越智代表外関係者を招き、整備後の照明環境の確認及び美星町民との意見交換を実施
2021(令和3)年11月
1日付(米国アリゾナ州現地時間)で美星町が「星空保護区®」の「コミュニティ部門」に認定されたとの連絡が入る。
〈関連行事〉 ・認定を祝して美星町民全員で星空を楽しむ観望会を開催(11/2付)
・認定証書授与式を岡山市内で開催(11/12付)
美星町 星空保護区認定証
認定証書授与式
星空保護区認定記念ロゴマーク
【認定に際しての井原市長及び認定機関である国際ダークスカイ協会(IDA)のコメント】
〈大舌勲 井原市長のコメント〉
「アジア初の『ダークスカイ・コミュニティ』への認定を誇りに思うとともに、長年に渡りまちの名前にふさわしい美しい星空環境の保護に取り組んでこられた住民の方々とこの喜びを分かち合いたいと存じます。今後も、他の模範となる地域として、美星町の美しい星空を全力で守り育て、未来に受け継いでまいることを誓います。」
〈アシュリー・ウィルソン IDAダークスカイプレイス・プログラムマネージャーのコメント〉
「美星町の『ダークスカイ・コミュニティ』認定が、ダークスカイプレイス審査委員会の全会一致で支持されたことをお伝えすることができ、大変嬉しく思います。夜空を守るための地域社会のコミットメントと献身がもたらした、この大変素晴らしい成果を祝福します。この努力が報われた今回の朗報を、関係者のみなさまにはきっと喜んで頂けると思います。この認定は、日本だけでなく、アジア全体にとっても記念すべき出来事です。」
【認定によって期待する効果】
(1)星空観光の促進(星空環境としてのブランド価値の向上)
(2)環境保護に関する取組や姿勢の表明及び周辺地域への啓発効果
(3)自然破壊行動・望まない開発に対する防御根拠
「星空保護区®」認定が、「専門機関による世界基準の客観的な評価」であるという意義は大きく、人々が実際に生活する環境の中で、その夜空の暗さが保たれており、客観的に評価されたというのは地域の誇りであり、大変価値のあるものです。
これまで星空保護の取組に30年以上活動してきたまちが、「星空保護区®」の認定を機に、これから20年先、30年先と次世代の子ども達に美しい星空が見える環境をこれまでと変わらずに残していくことが大事であり、取組の理念はしっかりと継承していかなければならないとの思いです。